[旅日記 vol1]World is one.~『深夜特急』に憧れて~

旅行
香港の旅、今回旅行場所を香港に決めたのは、やはり『深夜特急』による影響が大きい。
沢木耕太郎が非常に感動し、一番思い出に残ってる所にあげた香港を一度この目で見てみたいと思ったのがこの旅のきっかけである。

空港を降りると、モワーンという湿気を多く含んだ空気に、おもわず「日本よりジメジメしてんじゃん!」
香港に降り立った第一印象はこうである。
半日前まで日本にいて、昨日まで仕事をしていたというのが不思議なくらい、まるで、江ノ島にでも出かけるような感じで出てきた今回。
香港について全然調査してない。
まずどうしようか。
空港で両替して、とりあえず街に出るか。
エアーバスに乗り、尖沙咀(チム シャ ツォイ)で降りると、ましっぐらに安宿が集まるので有名な、重慶大厦(チョンギンマンション)に向かった。
あっ、その前にCITIBANKでお金を下ろそう。

「お兄さん、どこ行くの?」
戦場の挽歌に出てきそうな、まさに香港人の親父が話し掛けてきた。
私は、毛嫌いするようにシカトして歩き続けると、
「安い宿あるよ。」
親父はどこまでもついてくる。
そうだ、とりあえずCITIBANKの場所でも聞くか。
「CITIBANKを探してるんだよ。」私が言うと、
急にそれ来たと言わんばかりに、親父は
「知ってる、知ってる、案内するよ。」
付いて来いと、一人でずんずん歩いていった。
その後を用心しながら付いて行くと、すぐCITIBANKに着いた。
親父は銀行の中まで入ってきて、
「この後見るだけでいいから、部屋を見に来てくれ。」
そう言って、ちょっと離れたところで待っていた。
これじゃ、ちょっと逃げられないな。
しょうがない、何とか言って断るか。
500ドルをおろし、親父に礼を言って外を出ると、やはり親父は付いて来た。
とりあえずもうすでに泊まる所は決まってると言おう、
「泊まる所は決まってるんだ。」
すると、親父は、
「どこに泊まるんだ?」と、言ってきた、
え~、とりあえず重慶大厦に着いてから探そうと思っていたのに、でも、決まっていると言った手前、どこか言わないとまずいよな。
そうだ、確か『地球の歩き方』の重慶大厦の紹介の一番上に、DORAGON INNと言うゲストハウスの名前が書いてあったな。
「DORAGON INNに泊まろうと思ってるんだ」
そう言うと、親父は財布から、DORAGON INNと書いた名刺を取りだし、
「知ってる、知ってる、付いて来い」と、また、一人でずんずん歩いていった。
銀行を教えてもらった御礼もあるし、行くだけ行ってみるか。
重慶大厦と書いてある建物に入り、Aと書かれたエレベータに乗り、3階で降りた。
確か名刺にも3階と書いてあったな。
あってる、あってる。
エレベータを降りてすぐの扉を開けると、
「ここがDORAGON INNだよ。」と言い、親父は部屋の中に入るように促した。
しかし、入り口に何の表札もないし、ちょっと不信に思い、親父に、
「ほんとにここがDORAGON INNか?」と、私が尋ねると、
親父はまた名刺を見せ、
「ほら、間違いない、大丈夫だ。」と自信満々に言う。
しかし、名刺には、DORAGON INNは確かに3階と書いてあるが、
A棟の3階ではなく、B棟の3階と書かれてある。
嘘を言っていると分かった私は、
名刺を指差し、
「A棟ではなく、B棟じゃないか。」そう言うと、
親父は重慶大厦はA、B、という感じで分かれていて、ここがおまえが言っているB棟だと言って、扉にBと書かれた部屋に案内した。
それは、B棟ではなく、B室。
誰が見ても明らか、こんな嘘に引っかかるヤツがいるのかと思いながら、
「バーイ」と言い、部屋を後にした。
その後も親父はしつこく付いて来たが、2度と親父と話をすることはなかった。
まさに『地球の歩き方』に書いてあったとおりだ。
重慶大厦の前には、客引きがたむろしていて
「○○ゲストハウスの者だ。」とウソを言い、看板の出ていない部屋に連れて行かれ、
「フロントは別、ここは別館だ。」などと言って安心させるが、
そこはノーライセンスの宿で、言葉巧みに、あるいは脅しをきかせてボッタクルと言うケースが多発していると書いてあった。

こんないきさつもあり、宿は決めていなかったが、DORAGON INNに泊まることに決めた。
B棟の3階に行くと、でかでかとDORAGON INNと書いてあり、中には愛想のいいおばさんがいた。
150ドルの部屋を、3日泊まるので、120ドルに値切り、部屋に行くと、狭いが、テレビとエアコンがあり、寝るには十分の部屋だった。
1香港ドル=17円だから、3日で、6120円。
悪くない。
バッグをおろし、ベッドに寝転ぶと、今日の予定を地図を広げて考えた。
時計を見ると、15時30分。
まだまだ時間はある。
まずは沢木幸太郎がよく行ったと言う、廟街(ミウガイ)に行ってみよう。
地図を見ると、それほど遠くない。
街をぶらぶら歩くついでに、探してみるか。

街を歩いてみると、香港とはなんともきらびやかと言うか、ド派手。
看板も赤、青、黄、緑と、日本で言うと、大阪的な色彩感覚。
それに、狭いところに非常に多くの店がひしめき合っている。
よく、香港は、おもちゃ箱をひっくり返したような所だと言うが、まさにその言葉が当てはまる街だと思った。
メインロードの彌敦道(ネイザンロード)をまっすぐ進み、佐敦道(ジョーダンロード)を左に曲がった4本目の路地が、廟街である。
なんだ、ここ。
露店が出てるけど、対した事ないな。
そこは、こ汚い商店街の路地といった感じで、特に感じるところはなかった。
でも、まだ時間が早いしな。
ちょっとぶらぶらするか。
街を歩いていると、店、店、店、やっぱり香港は、グルメとショッピングの街だなと思わせるほど、店しかなく、私には性に合わなかったが、思うがままに、街を歩き、自分の中に香港の町を刻み込んでいった。
おなかが減ってきたな。
そう思ったのは、夜も7時をまわった頃。
結構歩いたんだなと思いながら、今日の食事を考えた。
とりあえず、オソードックスな香港料理を食べるか。
そう言えば、友人が重慶大厦を右に行ってすぐのところの店がおいしくて、2回も行ったと言っていたのを思い出し、そこを探してみることにした。
重慶大厦を右に行った所、どこだ。
食べ物屋なんてないぞ。
これかな。
FOOD街。
なんか、お店が集まったショッピングモール。
この中に、ショッピングセンターのレストランみたいな、5件ぐらいの食べ物屋が並んであり、注文して席に座るというような所があった。
私は、その中で、写真の張ってあった店で、ホイコーロのようなもの34ドルを頼んだ。
店のおばさんは、初めは広東語で何か言っていたが、私が呆然としてるのを見て、英語で、5分たったら取りに来なさいと言った。
5分後、タイ米のようなご飯と、テールスープ、それにホイコーロが出てきた。
どれもおいしく、残さず食べると、おばさんに礼を言い、私は海のほうに歩いていった。
彌敦道を佐敦道の方角と逆に歩き、香港文化中心の裏まで来ると、そこは写真で見たような風景。
海に浮き上がった香港島が、近代的な輝きと、100万ドルの片鱗を見せていた。
明日は、香港島に行ってみよう。

>>[旅日記 vol2]World is one.~香港島に行ってみた~

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